ライフステージごとに異なる貯蓄の目標とは?
貯蓄は人生の各ライフステージにおいて、目的と目標額が大きく変わります。20代では、就職や独立を経て初めて本格的な貯蓄を始め、30代では結婚や住宅購入を視野に入れた貯金を考えます。40代、50代に入ると、子どもの教育費や老後資金が課題となり、60代以降は老後の生活を支えるための貯蓄が焦点です。
貯蓄目標を設定する際に、平均値だけでなく中央値にも注目しましょう。平均値は一部の富裕層が大きく押し上げることがあるため、一般の家庭にとっては現実的でないことも多いです。これに対し、中央値は貯蓄のある家庭の中間点を示すため、より多くの人々にとって参考になる数値です。
なぜ中央値が重要か?
貯蓄額の「平均値」と「中央値」は、どちらも家計の状況を把握するために指標ですが、それぞれの意味合いは異なります。
平均値
全ての貯蓄額を合計し、世帯数で割った値です。しかし、貯蓄額が極端に多い世帯が含まれると、平均が実態とかけ離れてしまうことがあります。50代の貯蓄額の平均値は1000万円以上という結果が出ていますが、これは一部の富裕層が押し上げた結果であり、すべての家庭がこれに該当するわけではありません。
中央値
貯蓄額を小さい順に並べた時、真ん中に位置する値です。平均値が大きくぶれることがある一方で、中央値は実態に近い数値を示すため、目標設定においては参考にすべき指標です。50代の貯蓄額の中央値は350万円というデータがあり、多くの家庭がこの水準にあることがわかります。
20代・30代:結婚や子育てに向けた貯蓄目標
20代や30代では、キャリアの形成やライフイベントが進行中のため、貯蓄を進める余裕がまだ少ない時期かもしれません。しかし、この時期に貯蓄習慣をつけることが後の安定した生活に繋がります。一般的に、20代では収入も少なく、貯蓄額も比較的低い傾向にありますが、平均的な貯蓄額は151万円で、中央値は10万円と報告されています。
30代に入ると、結婚や出産、住宅購入といったライフイベントが増え、それに伴って貯蓄の重要性が増します。子どもができると教育費の準備が必要です。そのため、長期的な資金計画が求められます。30代の平均貯蓄額は599万円、中央値は130万円となっており、多くの家庭がこれを目標に貯蓄を進めていることがわかります。
40代・50代:教育資金と老後資金のバランスを取るための貯蓄
40代、50代になると、子どもの教育費がピークを迎える時期です。大学進学となると、一括払いで数百万円が必要になる場合もあります。教育費の準備を進めつつ、同時に老後資金の積み立ても始める必要があるため、家計のバランスを取ることが重要です。
40代の平均貯蓄額は811万円で、中央値は180万円です。多くの家庭で教育費に資金を集中させつつ、老後に備えて貯蓄を増やす努力が行われています。50代になると、教育費の負担が軽減される一方で、老後の生活を具体的に考える必要があります。50代の平均貯蓄額は1212万円、中央値は200万円と報告されており、少なくともこの水準を目標にすることが現実的です。
60代以降:老後の生活を支えるための貯蓄目安
60代以降は、年金や貯蓄に頼った生活になります。そのため、現役時代にどれだけ貯蓄を増やしてきたかが重要です。老後の資金は2000万円以上必要とされており、実際に60代の平均貯蓄額は1864万円と報告されていますが、中央値では530万円にとどまります。つまり、現実的には2000万円を超える貯蓄を持つ家庭は一部であり、多くの家庭では老後資金が不足する可能性があるのです。
このため、60代以降は貯蓄を取り崩しつつ、支出を抑える工夫が必要です。また、可能であれば、定年後も継続的に働くことで、貯蓄の減少を抑えられます。最終的には、現役時代に貯蓄を積み上げておくことが安心した老後生活を送るためのカギとなります。
貯蓄の重要性
貯蓄は、私たちの生活において重要な役割を果たします。将来の不測の事態やライフイベントに備えるために、計画的な貯蓄をすることが、安心で安定した生活を送るための基盤です。貯蓄がもたらす3つの大きなメリットについて解説します。
緊急時の安心感を得られる
人生には予測できない出来事がつきものです。急な病気や事故、突然の失業など、いつどんな形でお金が必要になるかはわかりません。こうした突発的な出費に対処するための備えとして、貯蓄は重要な役割を果たします。
貯蓄があることで、こうした緊急時にすぐに資金を用意することができ、不安やストレスを軽減することが可能です。医療費がかかる状況や急な修理費が必要なときに対応できる安心感は、金銭的なトラブルを防ぐための大きな利点です。
失業などで収入が一時的に途絶えた場合でも、一定期間は生活を支えることができるため、焦らずに次のステップに進む時間を確保できます。こうした安全網としての貯蓄は、現代社会において非常に価値のあるものです。
将来のライフイベントに備える計画的な資産形成
貯蓄は、将来の大きなライフイベントに備えるためにも不可欠です。結婚、住宅購入、子どもの教育費など、人生のさまざまな節目には大きな資金が必要になります。これらのライフイベントに対応するためには、計画的な資産形成が求められます。
結婚式やマイホームの購入を考える場合、数百万円単位のお金が必要になることがあります。また、子どもが生まれた場合、学費や生活費などの費用がかかるため、長期的な視点での貯蓄が大切です。大学進学までの教育費は公立でも数百万円、私立ではさらに多額になることが一般的です。
このように、ライフイベントに備えた貯蓄を計画的に行うことで、将来の大きな支出にも余裕を持って対応でき、金銭的な不安を軽減できます。無計画に借金に頼るのではなく、事前に資金を準備することで、安定した生活基盤を築くことが可能です。
資産運用への準備
貯蓄は、資産運用を始める際のスタートラインでもあります。投資を考える場合、元本割れのリスクがあるため、まずはリスクを抑えるための貯蓄がしっかりと確保されていることが前提となります。貯蓄がないままに投資を始めると、市場の変動に対して大きな不安を感じたり、突発的な出費に対応できなくなる可能性があります。
安全資産としての貯蓄を確保し、その上で投資を行うことで、リスクを分散しながら資産を増やせます。さらに、貯蓄をベースにしてから始める投資は、長期的な視点で複利効果を活用することができ、より安定した資産形成を目指すことが可能です。投資信託や新NISAを活用することで、少額からでも投資を始められ、非課税のメリットを受けながら資産を増やすことができます。
このように、貯蓄は投資を始める際の土台となるものであり、リスクを最小限に抑えながら効率的に資産運用を進めるために必要なものです。まずは生活を安定させるための貯蓄を確保し、その後で余裕資金を使って投資を行うことで、長期的な資産形成を目指せます。
貯蓄と投資、どちらが重要
家計管理において、貯蓄と投資のどちらを優先すべきかという問題は、よく議論されます。目的やリスクの観点から両者の違いを理解することが、効果的な資産管理には欠かせません。
貯蓄は、主にリスクを避けるための手段です。銀行預金や定期預金に資金を預けておくことで、元本割れのリスクを避け、いつでも引き出せる「流動性」を確保できます。急な出費や生活費をカバーするための緊急資金として貯蓄は重要です。また、予測不能な経済変動やリストラなどに備えるためにも、貯蓄は家計の安定に必要不可欠です。
一方、投資は、将来の資産形成や成長を目的とした手段です。リスクは伴いますが、株式や投資信託などに投資することで、銀行預金の利息を大きく超えるリターンを得る可能性があります。インフレに対して資産の価値を保つ手段として、投資は重要です。投資には元本割れのリスクがあるものの、長期的に見れば、貯蓄だけに頼るよりも効率的に資産を増やせる可能性があります。
これらを踏まえると、家計管理においては貯蓄と投資のバランスを適切に保つことが最も効果的です。緊急時に対応できる貯蓄を確保しつつ、余剰資金でリスクをコントロールしながら投資を進めることで、家計の安定と資産の成長を両立させることができます。
ライフステージに応じた投資と貯蓄の比率の変化
ライフステージによって、貯蓄と投資のバランスは変わっていきます。若い頃には、リスクを取っても時間をかけて回復できるため、投資を積極的に行うことが推奨されます。一方、年齢が上がるにつれて、リスクを避けるために貯蓄の比率を高めるのが一般的です。
20代や30代は、時間を味方にできるため、積極的に投資を行う時期です。この時期は、株式や投資信託を中心に、長期的な視点で資産形成を目指すことが有効です。また、積み立て型のNISAやiDeCoといった税制優遇制度を活用することで、さらに効率的に資産を増やすことが可能です。
一方、40代から50代にかけては、子どもの教育費や住宅ローンの返済など、大きな支出が増える時期でもあります。したがって、投資に回す余剰資金が少なくなる可能性がありますが、老後の資産形成のために投資を続けていきたいところです。この時期はリスクを減らし、債券や定期預金など安全性の高い資産に一部を移すことも有効です。
60代以降は、退職が視野に入り、収入が減少するため、貯蓄が重要になります。この時期には、リスクをできるだけ避け、流動性の高い現金や短期債券を中心に資産を管理することが推奨されます。老後の生活費を確保しつつ、投資で得た資産を慎重に取り崩す計画を立てることが必要です。
参考:貯蓄の平均値・中央値はいくら?ライフイベントや月毎に貯めたい金額も紹介|保険MANAVIスクエア|dot L THE MEDIA|ソニー生命保険